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HOME > Q&A > 情報検索ガイド > アイヌ文化に関する文献・視聴覚資料の目録(その1)総記ー“目録の目録”−

こんなときは

人物の足跡や関係する資料について知りたい

  

 このコーナーでは、これまで、何らかのテーマについて調べるための参考になる文献や視聴覚資料を紹介してきました。
今回からは、このコーナーのサブタイトルにある、「アイヌ文化に関する情報検索ガイド」としての内容をいっそう充実させるべく、アイヌの文化・歴史に関するさまざまな分野ごとに、あらためて、文献・視聴覚資料の目録やデータベースを紹介していきたいと思います。

近年、インターネットなどの普及とあいまって、アイヌ文化に関しても、徐々にではありますが、流通する情報は増えつつあるように思います。それだけに、情報を提供する側・利用する側の双方が、より広い視野を持ちつつ、情報を取捨選択していくことが重要になっていると思います。このコーナーが、引き続き、様々な学習や調査、図書館などでのレファレンスサービス等にとっての一助になれば幸いです。

区切り点

 今回は、「その1」として、特定の分野ではなく、アイヌ文化全般に関す目録・データベースについて紹介します。

1 目録の目録=「アイヌ文化書誌の書誌」
編集者 タイトル 所収書 発行所 発行年
出村文理
(編)
「アイヌ文化関係書誌の書誌(国内刊行編)
(抄)」
『文献探索 2007』 金沢文圃閣 2008年

 先ず紹介すべきは、「アイヌ文化関係書誌の書誌(国内刊行編)(抄)」(『文献探索 2007』、金沢文圃閣、2008年3月)です。
 これは、古くは『知里真志保著作集』の知里真志保著作目録、近年では『知里真志保書誌』(2002年)、『知里幸恵書誌』(2004年)、『ニール・ゴードン・マンロー書誌』(2006年)などのすぐれた個人書誌(著作目録及び関係文献目録)の編さんに携わった出村文理氏によるものです。出村氏が2007年6月時点で把握し得た、日本国内で1946(昭和21)年以降に刊行(復刻も含みます)されたアイヌ文化関係の目録を、「Ⅰ アイヌ文化関係書誌(全般)」「Ⅱ アイヌ文化関係雑誌記事・新聞記事書誌」「Ⅲ アイヌ文化関係主題別書誌」「Ⅳ 主要アイヌ文化関係執筆者の個人書誌(個人著作目録)」の四つの柱にそって網羅的に列記したものです。
 この「書誌の書誌」の特色は、目録として刊行された単行本や、雑誌・単行本所収の目録をひろく収録していることに加え、主な図書や雑誌特集・雑誌論文の巻末などにある「参考・引用文献」についても、収録の対象としていることも特徴の一つです。これによって、例えば、まとまった目録が刊行されていない「アイヌ絵」のようなテーマについても、佐々木利和『アイヌ絵誌の研究』(2004年)や五十嵐聡美『アイヌ絵巻探訪』(2003年)の「参考文献」欄があると知ることができるのです。
 アイヌ文化に関する情報検索・情報収集・文献紹介などの仕事には、先ずこの「書誌の書誌」が欠かせないと思います。これから紹介する様々な目録も、ほとんどは出村氏のこの「書誌の書誌」で取り上げられているものです。

2 総合的な文献目録 ─2000年ころまで─
式場隆三郎(編) 「アイヌ書誌」 『工芸』第107号 日本民芸協会 1942年
グシンデ・マリティン(編) 『アイヌ文献目録(An Annotated Bibliography od Ainu Studies by Japanese Scholors)』 平凡社 1962年
松下亘・君尹彦(編) 『アイヌ文献目録 和文編』   みやま書房 1978年
アダミ・ノルベルト(編)、小坂洋右(訳) 『アイヌ民族文献目録 欧文編』   サッポロ堂書店 1991年
煎本孝(編) 『AINU BIBLIOGRAPHY』   北海道大学 1992年
北海道読書新聞社(編) 『アイヌ文献データベース(書籍) 1868-2000』   北海道読書新聞社 2002年
関秀志(編) 「民族(アイヌの歴史と文化)」 『北海道の研究 8 文献目録・索引篇』 清文堂 1988年

 アイヌ文化に関する総合的な文献目録のうち、2000年ころまでに刊行された主なものを上にまとめました。
 いずれも、多くの文献に目配りした貴重な仕事ですが、より網羅的な目録あるいは貴重な情報を得ることができるものとして、日本語文献については、「アイヌ書誌」と『アイヌ文献目録 和文編』の2点、外国語文献については『アイヌ文献目録 欧文編』を挙げたいと思います。
 「アイヌ書誌」は1942(昭和17)年という、かなり古い時期にまとめられたものですから、当然ながら現在から見れば取り上げられている文献の数は極めて限られています。それでも、個々の文献に丁寧な解説文が付いているところが出色で、読み進めていくと、現在でもあまり知られていない貴重な文献にも行き当たります。
 『アイヌ文献目録 和文編』は、1975年までに刊行された日本語文献を対象としたもので、やはり今日から見れば、30年以上も前の情報までしか収録されていないわけですから、足りないところが多くなるのはやむを得ないことです。しかしながら、本書はこれまでのアイヌ文化に関する文献目録の中ではもっとも収録文献数が多く、とりわけ雑誌に掲載された記事や論文をたくさん収録している点はたいへん有益だと思います。
 これらの文献については、以前にも当研究センターの広報紙『アイヌ民族文化研究センターだより』第15号(2001年)に、「現代のアイヌ書誌をめざして」と題した記事を掲載して紹介したことがありますので、参照していただければ幸いです。

3 総合的な文献目録 ─近年まで継続的に刊行されているもの─
アイヌ年誌刊行会(編)→アイヌ無形文化伝承保存会(編) 『アイヌ年誌』〔1987~1999年〕   アイヌ年誌刊行会→491アヴァン→アイヌ無形文化伝承保存会 1988~2000年
笹倉いる美(編) 「のるりすと 北方研究データベース」〔1993年~継続刊行中〕 『北海道立北方民族博物館研究紀要』第7号~ 北海道立北方民族博物館 1998年~
アイヌ文献目録刊行会(編) 「アイヌ文献目録」〔2003~2007年〕 『北海道立アイヌ民族文化研究センター研究紀要』第11号~15号 北海道立アイヌ民族文化研究センター 2005年~2009年

 さいごに、近年、継続的に刊行されている文献目録を紹介します。
 「のるりすと」は、北海道立北方民族博物館の『研究紀要』に連載されているほか、そのデータは同館のホームページ上から検索することもできます。アイヌを含む、いわゆる北方諸民族・地域を研究している研究者に対し、毎年、アンケート形式でその年執筆した文献を調査した結果をまとめたものです。調査対象が限定されていますので、掲載される文献の範囲は限られるという側面もありますが、新聞記事や非流通本への執筆など、なかなか目にとまりにくい文献が載っていることも多く、さまざまな調べものなどには欠かせないデータベースだと思います。
「アイヌ文献目録」は、当研究センターの『研究紀要』に掲載してきたものですが、PDFファイルをこのホームページ上に掲載していますので、そちらをご覧いただくこともできます。

 「アイヌ文化書誌の書誌」の結びで、出村氏は、「明治以降のアイヌ文化関係のすべての文献について、検索可能なデータベースの構築が必要となってきている。北海道内の研究機関・大学・図書館・博物館等の合同によるデータベース構築を期待するものである。」と述べています。何かのテーマについて何らかの基準や目安を持って調査する、その基盤には、すべての文献を網羅した情報検索が整備されていることが、たしかに重要です。道立の、アイヌ文化に関する調査研究・情報収集提供機関として、基礎的な情報検索の整備という事業に取り組んでいきたいと思います。

 次回から、具体的なテーマごとの目録を紹介していきます。

(研究職員 小川正人)



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