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久保寺逸彦文庫について
研究センターでは、1997(平成9)年度に、アイヌ口承文芸研究の第一人者として知られる故・久保寺逸彦氏(1902〜1971年)が生前研究に用いた図書・調査資料などを、ご遺族から寄贈を受け、「久保寺逸彦文庫」と命名しました。
このうち、音声資料と写真資料については、整理作業を終えたものを順次公開しています。
久保寺逸彦文庫については、図書資料、文書・写真資料、音声・映像資料の目録を刊行していますのでご参照ください。
久保寺逸彦氏の略歴
1902(明治35)年北海道紋別郡雄武町生まれ、旧制釧路中学(現釧路湖陵高等学校)、山梨県立甲府中学を経て國學院大學に進学。大学在学中に金田一京助氏の指導を受けてアイヌ語の調査研究を始める。大学卒業後は東京府立第七中学校、東京第二師範学校(のち東京学芸大学)の教員を歴任、アイヌ語アイヌ文化の調査研究を進める。1960年、『アイヌ叙事詩 神謡・聖伝の研究』により博士号。
氏の研究は、金田一氏のほか、同世代であった知里真志保氏、山田秀三氏らと研究上の交わりを持ち、二谷国松氏らの伝承者に教えを受けながら進められ、特に口承文芸や宗教儀礼について貴重な調査記録を収集し、その翻訳・整理などの基礎的な作業において大きな蓄積を遺した。1933〜35(昭和8〜10)年に金田一京助氏らと共にサハリン(樺太)や北海道各地で行なった調査での録音記録は、アイヌ口承文芸等に関するまとまった分量の録音資料としては最古のものである。
氏の没後、遺稿ノートの一部やアイヌ語辞典稿は『久保寺逸彦ノート』『久保寺逸彦 アイヌ語日本語辞典稿』として北海道教育委員会から翻刻刊行されたほか、主要な論文については、現在、『久保寺逸彦著作集』(草風館)の刊行が継続中である(2003年4月現在、第1巻のみ刊行)。