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〔山田秀三文庫と久保寺逸彦文庫の資料から〕

「家の外壁の前に並べた器物」 (資料番号:KP1105-013)

写真
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図版
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当時の国道(現在の弟子屈橋)から上流向きに写す。
山田秀三氏が釧路から阿寒、弟子屈などをへて網走へと調査した時の記録より。


 久保寺逸彦氏は、1935年に北海道と樺太(からふと・現サハリン)での一か月にわたる調査行に赴き、 筆録のほか、写真撮影(原盤はガラス乾板)、録音(レコード盤)や録画(16ミリフィルム)を行った。研究調査に際して録音や録画を行うことは、 現在ではごく当たり前になっているが、当時としては非常に珍しいことだった。 日本人のアイヌ文化研究者が行った録音・録画資料としては、最も古い時期のものになる。

 上の写真は、久保寺氏が樺太の泊岸(とまりけし)村の新問(にいとい)で家の壁の前に台を作り撮影したものである。 この写真1枚から、新問の人々が大切にしていた品々とはどのようなものか、うかがうことができる。
 外壁に沿って簡単な台が作られ、台の奥に大きな茣蓙(ござ)(①)を横に広げている。建物の窓枠からは、刀掛帯に入った3 本の刀(②)とイナウが下がっている。 台の左奥には鶴の文様が付いた陣羽織と思われる着物(③)が、中央には椀、膳、行器(ほかい)、天目台などの漆器(④)が、 右手前には鎧(よろい)の胴部(⑤)と思われるものと、それに立てかけた2 本の刀(⑥)が見られる。

 アイヌの伝統的な茣蓙の文様は、端を除いてシンメトリーに作るのが一般的だが、①は文様の大きさや形が異なる。 縁取り(写真では上下の端)にも文様を施しているのも特徴である。
 ④の漆器、⑤の鎧は、交易による移入品。アイヌの民具の中に鎧があったことは、古い記録には残っているが、現存するものはないと思われる。
 ⑥の、向かって左の刀の刀掛帯は、布に刺繍を施した、樺太に特徴的なものである。


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