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はじめまして!北海道立アイヌ民族文化研究センターです。
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メルマガ「Do・Ryoku」読者の皆さんは、
北海道の地名の多くがアイヌ語に由来するものだということをご存知だと思います。
地名の他にも、北海道での日々の暮らしの中で見聞きするものの中には、
アイヌ語に由来する名前のものや、アイヌの文化・歴史と深く関わるものがたくさんあります。
また近年、地球環境の問題などが話題になる中で、アイヌの伝統文化が改めて注目されることも増え、
最近では、いろいろな施設や商品の名前にもアイヌ語を使ったものが目に留まるようになりました。
一方で、アイヌ語やアイヌ文化についての基本的な情報に触れる機会は、
まだあまり多くはないようです。
この連載では、当研究センターが編集・発行した小冊子の内容をベースに、
「ことば(アイヌ語)」、「信仰」、「衣・食・住」、「口承文芸」、「芸能(歌や踊り)」、
「地名」などの中から、毎回、一つ、二つ程度の話題に焦点を当てながら、
アイヌ文化のあらましや知っておいていただきたいことなどをご紹介します。
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▼ 「アイヌ(aynu)」と「カムイ(kamuy)」 ▼
今回は、初めてですので、「アイヌ」という言葉から始めます。
「アイヌ」という語は、(1)人間(2)男・男性 といった意味を持つほか、
民族の自称として用いられたり、
コロ(kor :~の)という語の後ろに置いて「~のお父さん」といった意味にもなります。
このうち、(1)の「人間」というのは、カムイ(神)に対応する意味での「人間」です。
アイヌの伝統的な信仰では、あらゆるものには"魂"が宿っていると考えられています。
中でも、植物や動物など人間に自然の恵みを与えてくれるもの、火や水、
生活用具など人間が生きていくのに欠かせないもの、天候のように人間の力の及ばないものなどを、
カムイとして敬いました。そして、この世界は、人間とカムイとが、
お互いに関わりあい影響を及ぼしあって成り立っているものだ、と考えられていました。
いま、カムイを日本語で短く説明するときに「神」と書きましたが、アイヌの信仰におけるカムイは、
神道や仏教、キリスト教などの「神」「仏」とは、意味の重なる部分もあるものの、同じではありません。
このあたりの説明や、人間とカムイとの関わり合いとはどんなものなのか等については、
いずれこの連載の中で触れていきたいと思います。
それから、上のほうで「コロ 」の「ロ」の字が小文字で書かれていることにもお気づきでしょうか。
ローマ字の表記も、「koro」ではなく「kor」なのです。これは、アイヌ語の発音と、
それを日本語のカタカナでどう表すか、という問題と関わっています。このことについては、
次回のこのコラムで、改めて説明したいと思います。
こんなふうに、アイヌの文化について、一つのことを説明していくと、いろいろな話が広がっていきます。
これからも、どうかこの連載にお付き合いください。
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最後に一つ。「カムイ」(kamuy)という語、声に出して言うと、どんなアクセントになるか、
ご存知でしょうか。日本語の話し方で「カムイ」と発音すると、「ka」にアクセントがあることが多いようですが、
アイヌ語のアクセントの一般的なかたちでは、「muy」にアクセントがあります。
日本語の発音だけに慣れた人にはなかなかイメージしづらいかもしれませんが、
例えばJR北海道の札幌・旭川間を走る特急「スーパーカムイ」に乗ることがあれば、
テープで流れる英語の車内放送が「カムイ」をどう発音しているか、注意して聞いてみてください。
アイヌ語とぴったり同じ、というわけではありませんが、アクセントの様子はイメージできるのではないかと思います。
なお、当研究センターがインターネット上に開設した「ほっかいどうアイヌ語アーカイブ」の「アイヌ語入門」のページでは、語り手による単語や短い文などの発音を実際に聞いていただくことができます。どうかご利用ください。
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