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【第27回】  2014(平成26)年5月16日配信

実はこれもアイヌ語地名



    こんにちは!北海道立アイヌ民族文化研究センターです。
   前回、北海道の地名の多くがアイヌ語に由来するというお話をしました。これらの中には、一見するとアイヌ語地名だと気付きにくいものも、たくさんあります。

 例えば、根室管内の羅臼町に「麻布(あざぶ)」という地名があります。
「麻布」というと、東京都の麻布を思い浮かべる方が多いと思いますが、北海道では「麻生」と書く地名が、札幌市、石狩管内月形(つきがた)町、上川管内名寄(なよろ)市に見られます。
 札幌の麻生(あさぶ)は、かつて亜麻(あま)がこの地域の主要な作物だったことによるとされ、ここに製麻会社の工場が設けられていた時代もありました。月形の麻生(あざぶ)と名寄の麻生(あざぶ)も、亜麻工場があったり、工場の土地があったりしたことに由来するとされています。ちなみに、東京の麻布(あさぶ)という地名も、麻が生えていたから、麻布を産したから、などの説があります。これらは皆、日本語に由来する地名です。

 では羅臼の麻布は、といいますと、昔は「於尋麻布(おたずねまっぷ)」と呼ばれていました。これは「オ・タッニ・オマ・プ」=川尻に・樺の木が・ある・もの(川) という、アイヌ語に由来するとされています。
 つまり、アイヌ語で呼ばれていた地名に漢字が当てられ、後に、その漢字の一部を省略する形で地名が改められて、一見するとアイヌ語に由来すると気付かれにくい「麻布」という地名になっている、ということなのです。

 また、知床半島の反対側、網走管内の斜里(しゃり)町に「朱円(しゅえん)」というところがあります。
 明治30年(1897年)頃の地図では、朱円の読み方は「シュマトカリ」で、昔はこう呼ばれていました。これは、この地域を流れる川の名が「シュマトゥカリペッ」=スマ(石の)・トゥカリ(こちらの/手前の)・ペッ(川) と呼ばれたことに由来するとされ、このあたりの海岸は、西側からずっと砂浜が続いてきて、この川の川口を境にして東側はゴロゴロした石だらけの地形になっています。
 朱円の場合は、アイヌ語に由来する地名に漢字が当てられ、後にその読み方が改められた結果、アイヌ語に由来するとは気付きにくい地名になっていると言えそうです。

 北海道で暮らす人びとが普段、当たり前のように呼び慣れている地名には、こんなふうに、さまざまな形でアイヌ語に由来しているものがたくさんあるのです。

【参考】『北海道の地名』(山田秀三著、草風館発行、2000年)
 北海道立図書館などで閲覧することができます。このコラムでのアイヌ語地名の説明は特に断りのない限り、この山田秀三氏の著作をもとにしています。

▼アイヌ民族文化研究センター発行アイヌ文化紹介小冊子 第9巻「地名」

 http://ainu-center.hm.pref.hokkaido.lg.jp/HacrcHpImage/05/pdf/05_005_09.pdf


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