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【第28回】  2014(平成26)年6月6日配信

川の名前の「支」



    こんにちは!北海道立アイヌ民族文化研究センターです。
   アイヌ語に由来する地名によく見られる言葉に「ポロ」と「ポン」があります。
 「ポロ(poro)」は「大きい」、「ポン(pon)」は「小さい」といった意味で、川の名前などによく見られます。

 例えば、胆振(いぶり)地方の登別市や日高地方の浦河町などにある「幌別(ほろべつ)川」は「ポロ・ペッ」(大きい・川)に由来するとされ、十勝地方の本別町や渡島(おしま)地方の鹿部(しかべ)町などにある「本別川」は「ポン・ペッ」(小さい・川)に由来するとされています。
 その地域の近隣の川の中で比較的大きな川に「ポロ」が付けられたり、並ぶように流れている二つの川で長さ・大きさが異なるときに「大」「小」が付けられたり、ある川から支流が分かれた場合に、その支流のほうに「ポン」が付けられていたり──といった例が多いようです。

 したがって、「ポン」が付く川でも、他の地域の「ポロ」が付く川より大きいこともあります。例えば、"本別町の本別川"は、長さ20kmを超える、そこそこ大きな川です。一方で、"登別市の幌別川"は長さ18kmほどで、川の長さや流域の面積などを比べると、本別町の本別川と同じぐらいか、やや小さいほどです。

 「ポロ」と似たような意味で、川の名前によく見られる言葉に「シ(si)」があります。「本当の、主たる、大きい」といった意味があり、川の名に付く場合は、川の本流と考えられた流れに付けられたり、その地域の中で大きな川に付けられていたようです。
 上川地方の「士別(しべつ)」は、天塩(てしお)川がここで二つに分かれるため、その本流の方を指す「シ・ペッ」に由来するとされています。そして、根室地方の「標津(しべつ)」は、標津川がこのあたりでは大きな川であることから「シ・ペッ」と呼ばれたことが由来のようです。さらに、空知地方の夕張(ゆうばり)市に「シューパロ湖」がありますが、この「シューパロ」は、「シ・ユーパロ(si・yupar)」=「本流の・夕張川」に由来するとされています。

 この「シ」に漢字が当てられるとき、「支」の字が用いられている例がいくつか見られます。オホーツク海にそそぐ湧別(ゆうべつ)川は、遠軽町の白滝(しらたき)で大きく二つに分かれますが、その片方が「支湧別川」という名前です。
 日本語の知識だけで漢字を見てしまうと、「支流」や「支店」の「支」が付いているので、こちらが支流なのだと思ってしまいそうですが、アイヌ語のことを少しだけでも知っていると、実はこちらが"本流である"と考えられていたことがわかるのです。

<参考>『北海道の地名』(山田秀三著、草風館発行、2000年)
 北海道立図書館などで閲覧することができます。このコラムでのアイヌ語地名の説明は特に断りのない限り、この山田秀三氏の著作をもとにしています。

▼アイヌ民族文化研究センター発行アイヌ文化紹介小冊子 第9巻「地名」

 http://ainu-center.hm.pref.hokkaido.lg.jp/HacrcHpImage/05/pdf/05_005_09.pdf


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