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HOME > Q&A > 「アイヌ文化情報発信!コラム」より > 【第29回】 「崖(がけ)」をあらわす「平」

【第29回】  2014(平成26)年7月4日配信

川の名前の「支」



    こんにちは!北海道立アイヌ民族文化研究センターです。
   札幌市の豊平(とよひら)区や、空知地方の赤平(あかびら)市に、「平岸(ひらぎし)」という地名があります。どちらも、「ピラ・ケシ」(pira・kes =崖の・端)というアイヌ語に由来すると言われています。現在では、「崖の・端」が実際にどの場所を指すのか、はっきりとはわからないのですが、札幌市の平岸には、精進(しょうじん)川に沿って続く長い崖があり、赤平市の平岸の付近も、空知川に沿って崖がいくつも続いています。

   このように、崖を意味する「ピラ」が付いた地名は北海道の各地に見られます。
 最初に挙げた「豊平」や「赤平」の「平」も、この崖を意味する「ピラ」に由来すると言われています。このほか、日高地方の平取(びらとり)町の「平取」、道南の八雲(やくも)町熊石の「平田内(ひらたない)」も、崖を意味する「ピラ」が付いた地名です。
 また、アイヌ語に由来する地名は、東北地方の北部にも多く見られることがわかっており、秋田県の秋田空港の近くにある「平尾鳥(ひらおとり)」も、この「ピラ」が付いた地名だと言われています。

 この「ピラ」には、現在では「平」という漢字が当てられている場合が多いようです。日本語の知識だけで見ていると、平らな土地のような印象を持たれるかもしれませんが、アイヌ語に由来している場合は「崖」に関係する地名なのです。

 さて、当研究センターでは、来たる7月15日(火)から8月17日(日)まで、アイヌ語地名研究の第一人者である、故・山田秀三(ひでぞう)氏によるアイヌ語地名調査の資料を通して、アイヌ語地名の世界を紹介する企画展「アイヌ地名を歩く -山田秀三の地名研究から-」を、留萌地方の小平(おびら)町で開催します!(注:平成26年8月17日をもって終了しました)
 この小平も、崖を意味する「ピラ」の付く地名です。山田氏によれば、町を流れる小平蘂(おびらしべ)川の川名は「オ・ピラ・ウシ・ペッ」(川尻に・崖・ある・川)に由来するとされ、この川が海に注ぎ出るところには、海に向かって突き出すような小高い山があり、その下のところが崖になっています。

 展示では、留萌から小平を経て羽幌(はぼろ)あたりまでの、日本海に沿った地域の地名を紹介していきます。地元の皆さんはもとより、この夏、旅行などでこの地域を通りかかる方々が、小平に立ち寄っていただけると、たいへん嬉しく思います。

<参考>『北海道の地名』(山田秀三著、草風館発行、2000年)
 北海道立図書館などで閲覧することができます。このコラムでのアイヌ語地名の説明は特に断りのない限り、この山田秀三氏の著作をもとにしています。

▼アイヌ民族文化研究センター発行アイヌ文化紹介小冊子 第9巻「地名」

 http://ainu-center.hm.pref.hokkaido.lg.jp/HacrcHpImage/05/pdf/05_005_09.pdf


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