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去る7月19日から、札幌市を主な開催地として「都市と自然」をテーマにしたイベント「札幌国際芸術祭2014」が開幕しました。
開催初日の行事の一つとして、札幌市の都心、道庁赤れんが庁舎の正面にあたる北3条西3丁目の「北三条広場」で、アイヌ民族の伝統儀式「カムイノミ」が執り行われました。約1,000人の市民が見守る中で行われ、新聞などでも報道されたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。
カムイノミとは、「カムイ(神)」「ノミ(に祈る)」、すなわち人々が生活する上で必要なことを神(カムイ)に祈る儀式のことです。
アイヌの信仰では、この世の存在するあらゆるものに「魂」が宿っていると考えられています。なかでも、動物や植物など人間に自然の恵みを与えてくれるもの、火や水、暮らしの道具など、人間が生きていくうえで欠かすことのできないもの、天候や流行病など人間の力の及ばないものなどを「カムイ」として敬いました。
この世界は人間とカムイとが、お互いに関わりあい影響を及ぼしあって成り立っているものだ、と考えられています。そして、カムイへの頼みごとやお礼など、人間からカムイに対して伝えたいこと、伝えるべきことがあるときにカムイノミを行います。
カムイノミは、ちょっとした頼みごとから集落の安全などを祈るものまで、さまざまなかたちで行われます。日常生活のいろいろな場面で行うものや舟を作ったり家を建てるときなど、重要なことがらの際に行うものもあれば、豊漁の祈願やそのことへの感謝のように、一年の中で、ある程度決まった時期に行うものもあります。
明治以降の長い同化政策などにより、アイヌ語がアイヌの日常生活からも急速に姿を消してゆく中で、カムイノミなどをきちんと行うことのできる古老もたいへん少なくなったと言われています。それでも、自分たちの精神文化に関心を持ち、カムイノミなどを継承していこうとする人たちが増えつつあります。今回のカムイノミも、こうした人たちが中心となって執り行われたものです。
近年、このように昔の儀式を復活する取り組みが、各地で見られるようになりました。これらの行事はこれから秋にかけて行われるものが多いので、カムイノミを実際に見ることができる機会もあるのではないかと思います。
では、カムイノミでは実際にどのような祈り言葉を述べるのでしょうか。どのような祭具を使い、どのような手順や心がけで準備をし、儀式を進めるのでしょうか。次回から、そういったことに触れてみたいと思います。
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