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こんにちは! 北海道立アイヌ民族文化研究センターです。
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このコラムでは、この秋、アイヌの儀式「カムイノミ」について紹介しています。カムイノミとは、「カムイ(神)」「ノミ(~に祈る)」、すなわち人々が生活する上で必要なさまざまなことを神(カムイ)に祈る儀式のことです。
今回は、儀式のなかで、実際にカムイにどのように祈りのことばを語っているのか、カムイへの呼びかけ方やその心構えなどについて紹介します。
カムイノミでは、十分な経験を積み、しきたりをよく知る男性が祭司をつとめます。
祭司は、まず火のカムイに祈ります。火のカムイは、様々なカムイの中でも、大切なカムイとされるものの一つです。火は、人間に温もりや灯りを与えてくれるだけでなく、その熱で煮炊きをさせてくれます。そして、人間の願い、訴えを聞いて、他のカムイへ伝えてくれると考えられています。もし、人間の祈り言葉に足りないところがあれば、それをうまく補う役目も果たしてます。火のカムイは、媼(おうな=年取った女性)、あるいは老夫婦だと考えられていることが多いようです。
火のカムイへの祈り言葉は、地域や人によってさまざまです。
実際の記録などから、最初の部分の言葉について、いくつかの例を見てみると・・・
モシリコロフチ シパセカムイ…
(大地を司る媼(おうな)、真の重たい(尊い)神よ)
イレスフチ シオイナカムイ…
(育ての神、真の尊き神よ)
ロロワエカシ ウサラワウチ…
(上座の火の翁(おきな)よ、下座の火の媼よ)
・・・というような場合があります。
尊敬と親しみを込めた言葉が、対句のように美しく繰り返されていくのです。
昔から言われていることであり、どの民族の儀式でも同じことだと思いますが、カムイノミで大切なのは、言葉を流ちょうに唱えるだけではなく、その祈りに込める心のあり方であるとされています。火のカムイは、人間の祈り言葉に、その気持ちを感じて行動してくれると考えられているからです。
次回は、カムイノミの実際の手順~準備から終わった後のことまで~について紹介します。
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