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【第32回】  2014(平成26)年9月26日配信

アイヌの儀式「カムイノミ」(その3)〜火のカムイに対する言葉〜



    こんにちは! 北海道立アイヌ民族文化研究センターです。
   このコラムでは、この秋、アイヌの儀式「カムイノミ」について紹介しています。カムイノミとは、「カムイ(神)」「ノミ(~に祈る)」、すなわち人々が生活する上で必要なさまざまなことを神(カムイ)に祈る儀式のことです。
 今回は、儀式のなかで、実際にカムイにどのように祈りのことばを語っているのか、カムイへの呼びかけ方やその心構えなどについて紹介します。
 カムイノミでは、十分な経験を積み、しきたりをよく知る男性が祭司をつとめます。
 祭司は、まず火のカムイに祈ります。火のカムイは、様々なカムイの中でも、大切なカムイとされるものの一つです。火は、人間に温もりや灯りを与えてくれるだけでなく、その熱で煮炊きをさせてくれます。そして、人間の願い、訴えを聞いて、他のカムイへ伝えてくれると考えられています。もし、人間の祈り言葉に足りないところがあれば、それをうまく補う役目も果たしてます。火のカムイは、媼(おうな=年取った女性)、あるいは老夫婦だと考えられていることが多いようです。 
 火のカムイへの祈り言葉は、地域や人によってさまざまです。
 実際の記録などから、最初の部分の言葉について、いくつかの例を見てみると・・・
 モシリコロフチ シパセカムイ… 
 (大地を司る媼(おうな)、真の重たい(尊い)神よ)
 イレスフチ シオイナカムイ…
 (育ての神、真の尊き神よ)
 ロロワエカシ ウサラワウチ…
 (上座の火の翁(おきな)よ、下座の火の媼よ)
 ・・・というような場合があります。
 尊敬と親しみを込めた言葉が、対句のように美しく繰り返されていくのです。
 昔から言われていることであり、どの民族の儀式でも同じことだと思いますが、カムイノミで大切なのは、言葉を流ちょうに唱えるだけではなく、その祈りに込める心のあり方であるとされています。火のカムイは、人間の祈り言葉に、その気持ちを感じて行動してくれると考えられているからです。
 次回は、カムイノミの実際の手順~準備から終わった後のことまで~について紹介します。

▼アイヌ民族文化研究センター発行アイヌ文化紹介小冊子 第5巻「祈る」

 http://ainu-center.hm.pref.hokkaido.lg.jp/HacrcHpImage/05/pdf/05_005_05.pdf
 ※11ページに火のカムイについての説明が、24~25ページに儀式の流れが、それぞれ掲載されています。


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