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このコラムでは、この秋から、アイヌの儀式「カムイノミ」について紹介しています。
カムイノミとは「カムイ(神)」「ノミ(~に祈る)」、すなわち人々が生活する上で必要なさまざまなことを神(カムイ)に祈る儀式のことです。
カムイノミの儀式が始まると、祭司はまず火のカムイに祈ります。このときの手順や祈り言葉については、以前にこのコラムで紹介しました。今回は、そのあと、実際に祭壇に向かって唱える祈り言葉では、どんなことを語っているのか、その一節を紹介します。
以下に紹介するのは、今年の7月19日「札幌国際芸術祭2014」の開催初日の行事の一つとして、札幌市の「北三条広場」で行われたカムイノミでの、祈り言葉の一部です。
…タパン アスルアシ 北海道
(この噂に名高い 北海道が)
タプ アッカリノ
(これから 先も)
シピラサ エカシカイ クニ
(大きく発展するように)
カムイ ウタリ ネンポカイキ
(神々は なんとかして)
ウコサンニョ ワ ウコラムコロ ワ
(取りはからって 相談されて)
シサム ネヤッカ アイヌ ネヤッカ
(和人であっても アイヌであっても)
ピリカ スクプ アキ クニネ
(素晴らしい成長ができるように)
ウタラ クルカシ チセ クルカシ
(人々の上に 住居の上に)
イクルカシケ ワ
(私たちの行く末を)
イエプンキネ イキ クニ
(見守って 下さるよう)
オトゥスイ イレスイ タプネカネ
(二度も 三度も このように)
オリパク ケウトゥム トゥラ
(尊敬の 念と ともに)
ヤイライケ ケウトゥム トゥラ
(感謝の 気持ちと ともに)
タパン イノミ イノミ ネマヌプ
(この祈り、祈りごとというものを)
チャナン イノミ
(つたない 祈りごとを)
クイェ オケレ ハウェ ネナー
(私は 言い終えますよ。)
…
日本語の訳を見てお分かりのように、立場や出自の違いをこえて、皆の幸せが祈られています。このような言葉は、このときに限ったことではありません。カムイノミの中ではその場にいる自分たちだけでなく、皆の無事や幸せを神々に祈ることは、ごく当たり前に見られることなのです。
この夏からしばらく続けてきたカムイノミについての紹介は、今回でいったん小休止とさせていただき、次回から、またしばらくアイヌ語を起源とする地名を紹介します。
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