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こんにちは。北海道立アイヌ民族文化研究センターです。
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このコラムが届くのは、
ちょうどお盆が終わった頃(2012年8月17日付の記事)ですが、
ふるさとに帰省して、先祖のお墓をお参りしてきた、
という方もいるのではないでしょうか。
お盆の時期には、各地で先祖の霊を祀るさまざまな行事が行われます。
そこで今回は、アイヌの伝統的な信仰について、
先祖に対する考え方を中心にご紹介します。
アイヌの伝統的な信仰では、人間が亡くなった後は「死後の世界」に行く、
と考えられています。
そこでは、亡くなった人たちが生前と同じように村を作って、
生活しているとも言われています。
アイヌの葬儀では、亡くなった人が死後の世界の暮らしで使うため、
生活道具や装身具などを亡骸(なきがら)と一緒に埋葬したり、
家や家具、衣服などを燃やしたりしました。
ものを傷つけたり燃やすことで、
それらの品々が亡くなった人のもとに届くと考えられていました。
先祖に対する供養では、お菓子や果物、タバコなどを供え、
これらを先祖の暮らす「死後の世界」へ届けてもらうよう、
火のカムイ(カムイについては、
「【第1回】「アイヌ」と「カムイ」で紹介しています。)に祈ります。
死後の世界で暮らす人々は、これらのお祈りや供物を受け取ることで、
現世と同じような生活を送ることができると考えられています。
火のカムイは、人間の訴えや願いを聞き入れて、
他のカムイや先祖たちに伝えてくれる身近で大切なカムイとされています。
このようなカムイへの祈りの時、様々な供物とともに、
いっぱんに「イナウ」と呼ばれる木幣(もくへい)が供えられます。
イナウは、ヤナギやミズキなどの木を切って、皮をはぎ、
外側を削って作られます。様々な形や用途のものがあり、削った部分の形状も、
房のようになっていたり、もっと短い削りかけになっているものなど、
いろいろなものがあります。アイヌの伝統的な儀式を写した写真などを見ると、
このイナウが使われている様子がわかります。
先祖に対する供養は、家の中やその周囲で行われました。したがって、
亡くなった人を埋葬するお墓は作られますが、
お墓参りをして食べ物や花を供えるという習慣は、
昔はなかったと言われています。
また、アイヌの先祖供養は、お盆のような決まった時期だけ行うわけではなく、
儀式のときなど、一年の暮らしの中のさまざまな節目に行われていました。
先祖に食べ物などを供え終えたら、
その残りはみんなでいただくことになっています。
この世の人々とあの世の人々とが、
美味しいものなどは分かち合って食べたり飲んだりしたいという気持ちから、
そうするものと言われています。
なお、日本でのお盆の習慣は、
地域によって行事やしきたりの内容も異なり、
時代によって変化しているのと同じように、
アイヌの伝統的な信仰も、地域や家々によって考え方やしきたりに違いがあります。
例えば、死後の世界のことについても、
地域や伝承者によって考え方に違いがあり「あの世の様子などは、
あまりわからないものなのだ」という古老もいます。
また現代では、日本に住む多くの人と同じように、
アイヌも、一人ひとりが、様々な信仰観を持って生活しています。
日々の暮らしは現代の文化の中で過ごしつつ、
昔ながらの考え方やしきたりを大事に思う気持ちを持っている人も、
各地にいるのです。
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