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【第18回】  2013(平成25)年8月23日配信

アイヌ語の方言



    こんにちは。 北海道立アイヌ民族文化研究センターです。
    今回は、アイヌ語の方言について紹介します。
 「え!アイヌ語に方言?」と思った方もいるかもしれませんが、アイヌ語にも方言があります。
 アイヌ語の方言は、大きく北海道・樺太(サハリン)・北千島・本州東北北部の4つに分かれると考えられています。
 これらのうち、北千島と東北北部については、ほとんど資料が残されておらず、詳しいことはわかっていません。北海道と樺太では、発音や単語などが大きく違っていることがわかっています。道内でも地域による方言の違いがありますが、北海道と樺太との違いは道内の地域ごとの違いと比較して、かなり大きいと言うことができます。
 今から50年ほど前、アイヌ語の語り手の方がたくさんいた時代に、各地で聞き取り調査をした結果をまとめた『アイヌ語方言辞典』という辞典があります。この本をもとに、北海道の胆振地方の幌別(現在の登別市内)の方言、日高の沙流(さる)地方の方言、そして樺太(西海岸のライチシカ)の方言を比べてみましょう。

○おじいさん
 幌別:エカシ
 沙流:エカシ
 樺太:ヘンケ

○どこで働いているのか?
 幌別:ネイタ エモンライケ コラン ヤ?
どこで お前が働く ている か
 沙流:フナクタ エネプキ コロ エアン?
どこで お前が働く て お前がいるか
 樺太:ナハタ エモンライキヒ?
どこで お前が働くか

 「おじいさん」を意味する語は、北海道の幌別と沙流は同じですが、樺太は違っています。
 「どこで」を意味する語は、上の例では三つの地域で全て異なっています。
 「ネイタ」は、幌別のほか、道南の八雲や道北の旭川、道東の釧路など、道内の広い地域で使います。沙流方言では、上のような疑問文では「フナクタ」を使いますが、「どこで見た人かわからない」のような、疑問文ではない場合の「どこで」には「ネイタ」を使います。
 「ナハタnahta」は樺太方言でのみ使う単語です。また、「ナハタnahta」の「ハ h」は樺太方言でのみ聞かれる発音です。(ため息をついた時の「はー」に近い音です。)

 日本語も地域によってさまざまな方言があります。各地を訪れた機会に、地域の言葉を観察すると、その土地への関心も深まるのではないでしょうか。そんなときに、アイヌ語にも方言があることを思い出していただければ、と思います。

○【参考】『アイヌ語方言辞典』(服部四郎編、岩波書店発行、1964年)
 北海道立図書館などで閲覧することができます。

 ○アイヌ民族文化研究センター発行アイヌ文化紹介小冊子 第1巻「イタク はなす」
 http://ainu-center.hm.pref.hokkaido.lg.jp/HacrcHpImage/05/pdf/05_005_01.pdf


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