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9月から11月ごろにかけては、アイヌ文化に関する催し物が多く開かれます。読者の皆さんも、これらの行事で、アイヌの伝統的な歌や踊りをご覧になる機会があるかもしれません。
今回は、そのような公演の場でよく行われる歌や踊りの中から、数人が輪になって座って歌うスタイルで行われるものについてご紹介します。
まずは、その一例を聴いてみましょう。次のサイトの、「1座り歌「ポン クトシントコ」(旭川市)」のところをクリックしてみてください。
http://ainugo.hm.pref.hokkaido.lg.jp/html/01_03_02_02_00.html
これは、旭川市で伝承されている歌の一つです。いかがでしょう。
ここで歌われている歌詞は、「ポン クトシントコ イタ ソ カタ エトゥニン トゥニン エトゥニン チャリ」というものですが、まるで、「ポンポンポン…」「クトクトクト…」のように、次々と浮かび上がるように聞こえてくるのではないでしょうか。
これは、一つの歌を一定の間隔をおいて次々と追いかけるように歌い始めることでこのような響きになっているものです。このような歌い方は、アイヌの伝統的な歌い方の一つとして、比較的よく知られています。
また、歌と一緒に拍子をとる音が小さく聞こえてくるのがわかるでしょうか。
これは、歌いながら手で近くを叩いて拍子をとっているためです。よく見られるのは、「シントコ」と呼ばれる漆(うるし)塗りの容器の蓋を床に置き、それを囲んで数人が座り、全員で蓋の縁(へり)を手で軽く叩いて拍子をとりながら歌う、というかたちです。
多くの地域では、このようにして歌う曲をいくつか伝承していて、一つの曲を何回か繰り返した後で次の曲に移っていく、というかたちで歌われます。
アイヌ文化関連のいろいろなイベントで、舞台で数人の歌い手が円く座ってスタンバイしたとしたら、それはきっとこれから、このような座り歌が始まるところです。
そうした公演の場に居合わせたなら、どの地域の人たちが、どんな歌い方で、何曲続けるのか、どうぞ注目して聴いてみてください。
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