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当研究センターでは、アイヌ文化に関する貴重な資料をたくさん所蔵しています。今回はその中から、80年ほど昔に録音されたアイヌ語のレコードについて紹介します。
このレコードは、アイヌ語研究者である久保寺逸彦(くぼでら いつひこ:1902~1971年)さんが中心となって、1934(昭和9)年から1936(昭和11)年頃にかけて、北海道とサハリン(樺太)を廻って録音したもので、全部で 541枚も残されています。録音された地域は、北海道・サハリンの各地に及んでおり、今から80年ほど昔の、各地に伝承されていた物語や歌などを伝える点で、たいへん貴重な記録です。このとき同時に撮影された写真や16ミリフィルムによる録画、アイヌ語を筆録したノートなども残されています。
久保寺氏は、北海道にゆかりの深い人でもあります。
父は小学校の教員でした。久保寺氏が生まれた頃に、オホーツク沿岸の雄武(おうむ)の小学校の校長になり、1910(明治43)年から1924(大正13)年までは十勝地方の東台(とうだい:現池田町東台)の小学校の校長をつとめています。久保寺氏自身も、雄武の小学校に入学し、東台の小学校を卒業、釧路中学校(現釧路湖陵高等学校)に進学しています。在学中に山梨県に転居し、さらに東京に移っていますが、北海道で伝承者から聞き取りをした録音テープを聞いてみると、しばしば、「僕は北海道の生まれでしてね、中学は釧路だったんですよ・・・」と自己紹介しています。
当研究センターでは、この久保寺氏が遺した貴重な資料を、ご遺族のご厚意により寄贈を受け、「久保寺逸彦文庫」と名付け、整理を進めています。
来たる3月10日(月)から23日(日)まで、札幌市にある北海道大学アイヌ・先住民研究センターとの共催で、久保寺逸彦文庫の資料展を開催します。今回紹介した80年前に録音されたレコードも展示し、実際の音声も聞いていただけるようにする予定です。
3月21日(金・祝)には、久保寺氏とアイヌ口承文芸研究に関する講演会も行います。ぜひお越しください!(注:展示は平成26年3月23日で終了しています。)
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