研究紀要第9号 要旨
【研究ノート】1960年代、古老の歌の記憶 ― フィールド・ノートの落穂ひろい(1) (谷本一之)
【論文】Phonological Status of the Epenthetic Glides in the Chitose Dialect of Ainu (アイヌ語千歳方言におけるわたり音の音韻的地位について) (佐藤知己)
【研究ノート】近代北海道におけるアットゥシ産出の様相を解明するための予備的考察 -開拓使の統計資料の整理と分析を中心に -(本田優子)
【調査報告】松島トミさんの口承文芸 5 (大谷洋一)
【調査報告】北海道アイヌ協会浦河支部創立当時のこと:富菜愛吉 (小川正人)
【調査報告】黒川セツさんの伝承 1:アペクンチとペクンチの伝承 (貝澤太一)
〔各論文の要旨〕
【研究ノート】 1960年代、古老の歌の記憶 ― フィールド・ノートの落穂ひろい(1) (谷本一之)
〔要旨〕
1961(昭和36)~1963(昭和38)年にかけて、NHK札幌放送局が道内各地でアイヌの伝統音楽の大規模な調査事業を行いました。この調査に協力して歌や踊りを演唱して下さった方の多くは、当時70~80歳代で、明治初期の暮らしを実際に体験した世代でした。
この研究ノートは、この調査に従事した私が録音の合い間に記録したノートから、公刊された報告書では書き残された情報をひろい上げ、注釈を付けて紹介していこうとするものです。今回は、その第1回として、宗谷地方の柏木ベンさんからの記録を紹介しました。
【論文】 Phonological Status of the Epenthetic Glides in the Chitose Dialect of Ainu (アイヌ語千歳方言におけるわたり音の音韻的地位について) (佐藤 知己)
〔要旨〕
アイヌ語千歳方言、沙流方言等では、iや u の後に母音が来ると、母音の間に [j]、[w]が現れることがあります。従来、これらの音は特定の意味を表さないこともあって、音素として認められない場合が少なくありませんでした。
この論文では、問題の音が関与する「わたり音挿入」と「わたり音化」という二つの現象をサウンドスペクトログラフを併用しつつ考察し、これらの音が表層レベルでは音素としての十分な資格を有する一方で、深層レベルでは立てなくてもよい、という二面性を持つキメラ的存在であることを示しました。また、「わたり音挿入」と「わたり音化」が相互に作用しあって、語の統一性の保持と内部構造の明確化という一見矛盾する機能を発揮していることを指摘しました。
【研究ノート】 近代北海道におけるアットゥシ産出の様相を解明するための予備的考察 -開拓使の統計資料の整理と分析を中心に -(本田優子)
〔要旨〕
昨年に引き続き、アイヌの伝統的衣服の中でも中心的な位置をしめるアットゥシについて歴史的な検証を試みたものです。今回は、近代の北海道における生産と流通の様相を把握するための予備的作業として、主として開拓使の統計資料を中心とした整理・分析をおこないました。その結果、開拓使の時代には、統計上では北海道全体で年間1万反を超えるアットゥシの産出が続いた時期があったことを確認したほか、産出の実態を明らかにしていくための今後の作業課題もいくつか提起しました。
【調査報告】 松島トミさんの口承文芸 5 (大谷洋一)
〔要旨〕
大正11(1922)年、北海道の門別町(厚別川流域)に生まれ育った松島トミさんが語った口承文芸1編のテキストです。アイヌ語をカタカナとローマ字で記し、その日本語訳を付しています。
物語の内容は「ハリギリ(センノキ)を材料にして舟を作った若い男が味わった恐ろしい体験談」です。
【調査報告】 北海道アイヌ協会浦河支部創立当時のこと:富菜愛吉 (小川正人)
〔要旨〕
戦後間もない1945(昭和20)年から1948(昭和23)年ころ、社団法人北海道アイヌ協会(現在の社団法人北海道ウタリ協会)の創立など、道内各地でアイヌが様々な社会的政治的活動を展開しました。
この調査報告は、こうした活動を地域にあって実際に担っていた方に、北海道アイヌ協会浦河支部創設当時の活動の回想などを語っていただき、その内容をとりまとめるとともに、当時の新聞記事などの参考資料を付けたものです。
【調査報告】 黒川セツさんの伝承 1:アペクンチとペクンチの伝承 (貝澤太一)
〔要旨〕
北海道の平取町字貫気別に生まれ育った黒川セツさんは、貫気別地域に昔から伝わる伝承について、いくつか語ってくれました。
今回はその中から、「アペクンチとペクンチの伝承」について、その伝承の内容とそれにまつわるエピソードについて報告したものです。
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第09号 |
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